VWディーゼル排ガス問題 マツダの「不正ない」公式声明を検証する、の裏側

執筆者 | 10月 1, 2015 | REエンジン2 ディーゼル | コメント0件

ジャーナリストの方が切り込んでいるので転記するよ
 
マツダは9月29日、「マツダの排出ガス規制への適合対応について」というステートメントを発表し、ディーゼルエンジンについての不正がないことを宣言した。
 今回のフォルクスワーゲンのディーゼルエンジン不正プログラム事件に際し、日本のユーザーがもっとも不安に思っていたのは、乗用車として国内で最も大きなシェアを持つマツダのディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」は大丈夫なのかという事だろう。ユーザーにしてみれば、不安を感じるのは当然だ。
 今回はそのマツダのシステムについて検証してみたいと思う。
フォルクスワーゲンの不正とは?
 まずはフォルクスワーゲンの問題のおさらいからだ。フォルクスワーゲンは昨年までの欧州の排ガス規制「ユーロ5」に準拠してつくられていたディーゼルエンジン車を、ユーロ5より遥かに厳しい北米の規制「Tier2 Bin5」に適合させるため、テスト時のみ稼働するプログラムを用いて不正にパスしていた。これは確定事項だ。
 またドイツのドブリント運輸相が明らかにした所によれば、ドイツ国内でも、同社の1.6リッターと2.0リッターのディーゼルエンジンを搭載する約280万台が同様の不正プログラムを搭載していたという。これについてはワーゲンがすでに認めている。
 前述の様にユーロ5はNOx(窒素酸化物)に対してそれほど厳しい規制ではないので、ユーロ5適合エンジンに不正プログラムを使う必要があったとは考えにくい。現時点で、筆者は「ユーロ6」準拠の新しいエンジンリリースする際、厳しくなった規制をクリアさせるためにTier2 Bin5の時と同じ手口で不正プログラムを使ったのではないかと考えている。
 ドイツで行われた不正のメカニズムと対象エンジンについては、依然詳細が発表されていない。だが、同社のドイツ国内の販売台数は年間約120万台程度。さらにEU全体のディーゼル比率は約半分と言われている点から見ると、280万台という台数はおおよそ5年分に相当する。もちろんこの数値は概算である上、この中で特定エンジンだけが不正をしていたならば計算は違ってくる。
 フォルクスワーゲンは2009年から、ディーゼルエンジンを旧世代のユーロ5準拠のEA189型からユーロ6準拠の新世代EA288型に移行しており、台数で見ると上記の計算方法で推定されるEA288型のボリュームはドブリント運輸相がアナウンスした280万台とおおよそ合致するのである。
 さて、この不正プログラムが何をやっていたかと言えば、おそらく、燃料噴射量とタイミングの操作、EGR(排気ガス再循環)量の操作、NOx吸蔵触媒の予熱の組み合わせだろう。ソフトウエアだけでNOxを減らそうとすればできる事はそれしかない。
 では、なぜその制御を通常モデルでやらなかったかと言えば、以下の問題が発生するからだ。出力の低下。CO2の増加。NOx吸蔵触媒の早期劣化。出力の低下はドライバビリティを低下させる。CO2の増加はユーザーの課税額に直結する(ゆえにEUでは燃費と同等にこのCO2排出量は売れ行きを左右する)。またNOx吸蔵触媒の劣化は加熱回数に依存するので、寿命が短くなりランニングコストを増大させる。
 これが現時点で考えられるフォルクスワーゲンのディーゼル不正のあらましだ。
「後処理」ではなく燃焼時にNOxを減らす
[画像]マツダのクリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」。後処理ではなく、燃焼段階でNOx低減を目指した
 ようやく本題のマツダSKYACTIV-Dの検証に入る。SKYACTIV-Dは非常に変わったコンセプトのディーゼルエンジンである。ディーゼルの排ガスを考える時、基本になるのはNOxとPM(粒状物質)だ。ややこしいことにこのNOxとPMはトレードオフの関係にある。
 NOxが減る条件は以下の3点になる。
・圧縮比を下げる
・ゆっくり燃焼させる
・低音で燃焼させる
 NOxとPMはトレードオフなのでこの場合、PMが増える。しかし燃焼後排出されたガスを後処理で浄化しようとする時、PMはフィルターで濾しとることが比較的簡単なため処理がしやすいのだ。だからマツダは燃焼時のNOx低減に目標を絞って、NOxを元から退治するためのシステムを構築したのである。
 それは別の側面から見れば、高価なプラチナを使うNOx吸蔵触媒やユーザーが尿素水を補給する手間をかけなくてはならない尿素SCR装置を使わないことで、コストと保守労力の低減を図ることにも繋がる。
 そのために、マツダはエンジンの圧縮比をディーゼルエンジンの常識を破るほど低くし、EGRによって不活性ガスである排気ガスを吸気に混ぜて燃焼温度を下げた。圧縮比を下げたためパワーは落ちるが、同時にエンジン各部の強度も従来ほど必要なくなったため、エンジンのアルミブロック化や部品の軽量化が可能になり、全体として軽量なエンジンに仕上げることもできた。
エンジンのパワーダウンには目をつぶる
 圧縮比に焦点を絞れば、エンジンパワーを諦められないフォルクスワーゲンと、ある程度パワーに目をつぶってもNOxの根源的退治を狙ったマツダという構図になる。これはエンジン設計思想の違いである。もちろんフォルクスワーゲンが触媒などの後処理装置でNOxをきちんと処理できれば、それは単なる思想の違いに過ぎなかったのだが、少なくとも結果を見る限りそうはならなかった。
 さて、世界中の排ガス規制のどれであれ、不正な手段でパスしようと思えばできないことではない。仮にマツダが、燃焼そのものでNOxを処理し切れず、違法ソフトを使って不正な結果を出そうとした時、何ができるだろうか?
 燃焼速度を遅くしようと思えば、EGR量を増やすか噴射タイミングを遅くすればいい。燃焼温度を下げようと思えばEGR量を増やせばいい。パワーダウンを受け入れればできないことはないが、そこで不正をするくらいなら圧縮比を下げてパワーで不利な設計をしている意味がない。もう一つ燃料を濃くすれば燃焼温度は下がるが燃費が悪化し、PMが大変なことになる。
 要するに、後処理装置を持たないマツダのディーゼルエンジンでは、NOx吸蔵触媒の加温と尿素SCRの噴射量を増やすという最も簡単で効果がある方法が使えない。構造上、不正がしにくいシステムなのだ。
北米で発売を延期した「SKYACTIV-D」
 さて、ここで一度話が変わる。マツダはSKYACTIV-Dを北米で売っていない。これについては北米マツダからステートメントがでているので翻訳した全文を掲載する。
[画像]2014年1月にマツダが出したリリース。北米への「SKYACTIV-D」導入の延期について説明している
20150930-00000002-wordleaf-3ee3846e5ac9785e6ae2afb6c1e7c69c4
“マツダ、SKYACTIV-Dクリーンディーゼルの北米導入を延期
カリフォルニア州アーバイン発 (2014年1月8日) ―マツダ・ノースアメリカンオペレーションズ(Mazda North American Operations)は、2014年春に北米へ投入すると発表していたSKYACTIV-D(スカイアクティブ-D)クリーンディーゼルエンジンの導入タイミングについて、さらに延期することを本日発表した。
NOx後処理技術なしで排ガス規制適合の見通しは得られているが、マツダらしい走りの性能や燃費を両立するためには、更なる開発が必要と判断したためである。
北米導入の時期、技術スペック、燃費等の詳細情報は今後導入が近づいた時期に発表する。
カリフォルニア州アーバインに本社を置くマツダ・ノースアメリカンオペレーションズは約700の販社を通じて、米国およびメキシコでマツダブランド車両の販売、マーケティング、部品及びカスタマーサービスの提供をサポート。メキシコでのオペレーションはメキシコシティにある マツダモトールデメヒコがサポートしている。”
 つまり、十分なパワー&燃費とNOx基準のクリアが両立できていないので発売を見送ると言っている。不正をする気があれば何も発売を延期する必要はないと思われる。
 ちなみに、この事件が発覚して以降、Tier2 Bin5の規制について、あちこちで絶対数値のみが取り上げられているが、Tier2 Bin5の本当の厳しさはその数値ではなく、むしろエンジンの運転状況をより厳しくした場合の排ガス数値を求められる点だ。例えば、エンジンが冷えている状態からの急加速などは、NOxをコントロールするのが難しいし、新車時だけでなくクルマのライフタイムでの環境対策を図るため12万マイル(約20万キロ)走行後の数値で測定される。ユーロ5はそういう運転モードが緩かったのである。
 「NOxについて後処理なし規制適合をさせる見通し立っているが、走りの性能や燃費を犠牲にし過ぎないためには、更なる開発が必要だ」というマツダのステートメントからは、世界で最も圧縮比の低いディーゼルエンジンというアプローチによって、パワーを我慢してNOxを制御したエンジンを、さらにパワーダウンさせるわけにはいかないという苦しさが見えてくる。
 筆者はプログラムを解析したわけでもないし、その能力もない。ただ、こうした設計思想の違いや、北米での発売延期という事実をつなぎ合わせる限り、マツダのディーゼルに不正ソフトが使われているとは考えにくいと思っている。
(池田直渡・モータージャーナル)
@@@@@@@@@@
の、、裏側を、知っておいて。
北米での延期を十分なパワー&燃費とNOx基準のクリアが両立できていないので発売を見送ると言っている
と推察したようだけど、もう、片方をかいていない。いや、乗ってない人だし、、制御に詳しくないとわざわざ書いてる。けど。。
”北米の基準はクルマのライフタイムでの環境対策を図るため12万マイル(約20万キロ)走行後の数値で測定される”
たしかに、マツダのシステムはNoxは後処理が少ないので新車納車以降、点検で書き換えられてるファームウェアで操作しにくい。それはそれでいい。。。。問題はディーゼルの黒煙(PM)のほうだ、日本という国土で僕のように通勤距離が短い、または営業のように短距離で始動回数が多いともう一方の後処理であるPMの回収は冷間時や始動時での処理に追われアイドル不調や再始動時の振動があった。対策としてマツダによってソフトウェアでコントロールが可能だから何度かアップデートも行われた。(ユーザーが購入する増量装置”サブコン問題”もがPM回収装置の耐久事例には大きくかかわる)、僕のアテンザエンジンへの懸念、エンジン交換に至った経緯を踏まえ、排気ガス装置の制御なのか?エンジン本体なのか?というマツダへの懸念が僕はぬぐえない、
また、、購入後のユーザーによるサブコンの導入やチューニングファームへの書き換え、それらの製造者もこの機会に排気ガス装置の問題や耐久性に目を向けるべきだろう。
そうでなければ、マツダのディーゼルの将来がREのようにレッテルをユーザー自らが作り出すことに繋がってしまうことを懸念している。何かを取り付けして、リスクを知ってるのと知らないのとでは大違いマツダのディーゼルはまだ生まれたばかりなのだ。

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