ロータリーエンジンの圧縮低下のカギはこの写真にある傷の位置だ。
排気ポートの上側には多数あるけれど、下には傷がない。
原因はポートの中に溜まるカーボン
エンジンのアペックスシールがローターハウジング上にあるエキゾーストポートを下から上に通過する
このカーボン、ガソリンから生成されるのでオイルを変えても何を変えてもあまり発生量に変化はない、ただし
エアポンプで圧送されてエアコントロールバルブ(ACV)で測量された2次エア(ポートエア)による洗浄効果、は効果絶大なのだ。
これはちゃんと理由がある
この理由が理解出来たら、君はロータリー乗りのヒーローだ。
過去に書いた圧縮低下や低速トルクの低下の原因の記述にもう少し付け加えるとしよう
エキゾーストポートに排気が出た瞬間に圧力は下がる(温度も下がる)と排気ガス中の成分が気体から固体(その多くはCarbon)に変化(凝固、凝結)エキゾーストポート周辺に大量の黒い堆積物を生成します。
気体と個体が入れ替わるように一瞬です(昇華)
ですから、排気ガスの排出ポートの周りのカーボンが原因でスライドしてきたアペックスシールによってカーボン個体が挟まり、ローターハウジングを傷付けたり、アペックスシールの溝に入り込んでシールの動きを妨げ圧縮を下げます。
それはこの写真を見れば明白です
アペックスシールの移動方向は上側へ移動です
エキゾーストポートの上を、アペックスシールが通過するとき、穴を通過しきった所でカーボンが溜まってるとそのカーボンを引きづって傷をつけるのです。
エアポンプが働いていない、とか、エアコントロールバルブ(ACV)の動きが正常でないとカーボンの発生を抑えることができません。
傷の多い少ないが、排気ポートの上下ではっきり分かれていますね。
マツダの排気ガス装置は、排気ガスを低減するためだけに作られたわけではありません。こういったカーボン発生による引きずり摩耗を防ぐために、エキゾースト側にACVを使ってポートエアを送ると、未燃焼物が酸素の供給を受け、C(カーボン)と結びついてCO2(気体)となりポート周辺の温度をあげ固体化を防ぎます。(酸化)
エアポンプやACV等の排気ガス抑制装置が働いていないと、カーボン固形物の発生が増えてしまい、上側のポートが閉まるタイミングでカーボンが噛みこみます。
これが原因で、ローターハウジングの排気ポートの上側に傷が入るのです。
傷の多い、少ないは構造上必然であっても2次エア(ポートエア)を適正なタイミング、噴射量をエアコントロールバルブ(ACV)で行いカーボンとしての固体化を防ぎ、アペックスシールによる挟み込み摩耗、引きずり摩耗を防ぐため、マツダが苦心して作ったのが2次エア供給装置なのです。もちろんこれによってカーボンの発生量が激減するため排気ガスの濃度も下げることができます。
いわば、ロータリーエンジンの圧縮が下がるプロセス。(燃料調整だけで済むのではなく正しい排気ガス装置と、理解が必要という事)で、皆さんが手に入れたRX-7の圧縮が距離のわりに低い場合、また少しでも寿命を延ばすなら、この装置だけはしっかり交換しておかなければなりません。(古すぎるので既にゴム硬化が始まっている)
二次エアーに酸素を供給する量とタイミングをつかさどるACVは、10万kmに一度は変えてやるべき装置です。フィードバック領域はこの作業の繰り返しで排気ポート周辺のカーボンの洗浄を行い圧縮を引き上げます。
また仮にFC3Sのように排気ガス基準が低い形式でもこの装置を新品にすると圧縮が戻り、寿命がさらに延びますよ。
皆さんにも、心あたりがあるはずです。新車の時に10万㎞をノントラブルで走れたのにOH後は6万kmも走る前に圧縮が下がってしまうという現実に肩を落としてはいませんか?いくらエンジンを新品にしても新車の時の寿命に手が届かないのは、この排気ガス制御である2次エア供給装置の不調(ACV)が原因です。
アペックスシールが摩耗したから圧縮が下がるのではなくて、多くの場合排気ガス装置が寿命を迎えてる、または取り外されていた時期が過去にあった場合、7万㎞以下という距離の短いRX-7の圧縮にも大きく影響しているのです。正常な状態で使用したサーキットを走るRX-7のアペックスシールの摩耗量は0.3㎜しか、摩耗していなかったのですから。
また、この写真のように、排気マニホールドの色合いで判断はできません。論点はエキゾーストポートの瞬間的環境変化にあります。排気ポートが開いた瞬間、圧力と温度が一気に下がり急激な変化のある場所。ピンポイントで気体が固体に変化する排気のポート。皆さんが良く目にする排気マニホールドが高温で割れてるとか、不調なエンジンでマニホールドやタービンが真っ赤になってるのは常に高温高圧にさらされ続ける場所でだから見た目は綺麗なのです。
現在マツダに生産を終了したRX-7の排気ガス装置の再生産を求めており(パーツフェニックス活動)、マツダへのコメントを集めております。是非ご協力ください。これらの活動によってFD3Sにおいては再生産のめどが付き、継続していますがFC3Sに関しては新品供給は難しく、現在リビルトによる供給をマツダに提案しています。しかしたとえリビルトとはいえバルブやゴムパッキン、等のロット生産には最低100を必要としており、FC3Sの方のコメントをさらに求めています。
悪魔の爪痕で四十七士が苦労を重ねて解決できたのにはちゃんとメカニズムまで解析してるからですね。
今後も長く乗るためには必需な部品です。
ACVの再販、なんとかならないものですかね…
皆さんの理解と、協力が必要です。
過去は、エアポンプなんて邪魔でエンジンのパワーを食うとか言われていた時代もありましたが、いまや30年を過ぎる車両にとっては無くてはならないものになりました。