RX-7とECUの歴史
FD3SやFC3Sが搭載するロータリーエンジンのECU
ロータリーエンジンに限らず、ガソリンを燃料とするエンジンは、適切な混合気(燃料と空気)を適切に圧縮し、良いタイミングで点火させることにより、パワーを得る。
通常時は14:1~20:1の範疇で
薄い空燃比を目指して制御
電子制御燃料噴射装置(EGI)が導入されたエンジンがRX-7に初めて搭載されたのは、1983年9月16日のSA22Cのマイナーチェンジの際、追加された12Aターボ。
このSA22Cでは、燃料の制御だけを電子化しており、ディストリビューター(デスビ)は残っていた
また、同時期に発売されていたNAエンジンは2ステージ4バレル式キャブレターの仕様のままとなっている。
1985年9月30日にデビューしたFC3SとともにRX-7へ初搭載された13B型ターボエンジンでは、8ビット1チップのマイクロコンピューター(16KB)により、4本となったインジェクターによる燃料噴射、点火時期、アイドル回転数、排出ガス、ツインスクロールターボやデュアルインジェクターの切り替えなどの制御と、故障診断などを行っていた。
例えば、ノックセンサーによる電子式遅角制御が行われるのもFC3Sから、ということになる。
FC3Sではその後、1989年3月15日に登場した後期型で、前期ではアクチュエーター制御だったターボチャージャーのブーストコントロールも電子制御化されている。
そして1991年10月16日にFD3S型が登場。シーケンシャルツインターボ化された13B型ターボエンジンは、その2つのタービンの過給タイミングについても、電子制御で行うようになった。
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エンジン回転数と負荷に応じて、低速では1基、高速では2基のターボチャージャーを作動させる。
また、燃料噴射系はEGI-HS(ハイスピード“スピードデンシティ”システム)を採用し、吸入抵抗の減少と守備ンなレスポンスを実現。
従来の13B型エンジンの基本諸元を継承しながらも、吸気、排気、冷却、潤滑、電気の各系統及び電子システムに大幅な改良を図ったといわれている。
1996年1月17日(1995年12月生産から)、いわゆるIV型へのマイナーチェンジとともに電子制御コンピューターは16BIT化されている。
ECUで制御していること
最終的に決定したいのが燃料噴射量と点火時期
FC3Sの場合はエアフロメーターの電圧とエンジン回転数、FD3Sでは吸入空気圧力のセンサー電圧を軸として、スロットル開度と作動速度を加味した数値が、負荷として数値化される。
この負荷とエンジン回転数の数値が柱となって、後述する各種センサーによる数値の補正が入りつつ、燃料噴射量と点火時期が決定される。
ECUへ入る信号
FD3Sの場合
・吸入管圧力……吸入空気圧力から吸入空気量を計算
・スロットルポジション……アクセル開度と作動速度を検出
・クランク角……エンジン回転数とローター位置とを検出
・ノッキング……プラグホール上にノックセンサーを設置
・吸気温……吸入空気温度を測定
・水温……エンジン水温を計測
・燃温……ガソリン温度を計測
・車速(16BIT)……エンジン回転数と組み合わせてギア位置を計算
・ギア位置(8BIT)……ギアポジションを検出
ECUの補正項目
燃料噴射補正の項目
・始動後補正……水温(冷間時)、燃温(高温時)に応じて増量
・暖機補正……始動後燃温が正常ならば水温に応じて補正。暖気中は増量
・AT補正……P/Nからほかのレンジにシフトする際に増量
・加速補正……いわゆる加速増量。スロットルセンサーの動きに応じて増量
・減速補正……アクセルオフ時のスロットル変化量に応じた補正
・水温補正……暖気を除いた水温異常時に燃焼温度下げるために増量する補正
・吸気温補正……暖気中及び、通常走行時の高温時に吸気温をみながら増量
・レギュラーガソリン補正……レギュラーガソリンを給油した際の補正
・フィードバック補正……02センサーで燃調を理論空燃比に近づくようにする補正
・フィードバック学習補正……エンジン本体、センサー、インジェクターの経年変化による誤差を補正
・リーン・ベスト・アイドル補正……アイドリング時のエンジン回転数を安定させる補正
・ゾーン補正……アクセル開度や圧力、回転数などの条件により行う補正
点火補正
・水温補正……水温によるエンジン状態の補正
・吸気温補正……吸気温によるエンジン状態の補正
・加速補正……負荷が大きくなる加速中にアクセル開度に合わせて点火を遅角させる補正
・軽負荷ゾーン補正……低回転、低負荷領域でカーバッキングを抑えるための遅角補正
・レギュラーガソリン補正……ノッキングを抑えるため点火時期を遅らせる補正
・ノッキング補正……一定以上の燃料噴射時に発生したノッキングに対しての遅角補正
ブースト補正
ブースト補正
・水温補正……エンジン冷間状態の補正としてブーストを下げる、高温時にはブーストを下げる
・吸気温補正……吸気温による加給圧補正
・加速補正……負荷が大きくなる加速中にアクセル開度に合わせて加給圧の補正
・ツインターボ切り替え時の谷間のブースト補正
・軽負荷ゾーン補正……低回転、低負荷領域でカーバッキングを抑えるための遅角補正
・レギュラーガソリン補正……ノッキングを抑えるためブーストを下げる補正
・ノッキング補正……一定以上の燃料噴射時に発生したノッキングに対してのブースト補正
ECUチューニング
ECUチューンでできること
純正ECUをチューニングするというのは、一般的にECU内のROMのデータ領域に変更を加えること。
ROMにはプログラムとデータマップがあり、このデータマップに変更を加えるのが一般的なROMチューンだ。
ECUのCPUが、ROMに納められているプログラムに従って、その時々のセンサーからの信号などをもとに必要なデータマップを読みに行き、最終的に燃料噴射と点火をコントロールする。
この、ROMの中にあるデータマップの値を車両や装着パーツ、リクエストなどに応じて変更するのが純正ECUのチューニングとなる。
純正ECUのデータマップの書き換えで、その車両に合わせた燃料噴射量や点火時期にリセッティングすることができる。
また、多くのブーストアップ仕様は純正ECUで制御できるため、仕様によっては後付けのブーストコントローラーなどが必要ではないこともある。
純正ECUをもちいてリセッティングすることにより、排気ガス装置を使い更に環境側や、寿命側にシフトした制御もできることもメリットとしては大きい。
2020年問題、といえる経年変化とECUセットアップ
初期モデルで2021年で30周年を迎えるFD3S。最終年式でも17年が経過しているだけに、新車当時と同じノリでセッティングを進めることは難しいと思ったほうがいい。
こういった事例は、30年ほど前まではなかったこと。
1990年代当時の旧車と呼ばれるクルマは、すべて「キャブ車」だからだ。
現代の2020年の旧車はかなり手間がかかる。昔のようにキャブレターとデスビだけを意識する時代ではない。
インジェクターの劣化や、燃料ポンプ、燃料の圧力はもとより燃料ホースの劣化、タンクの錆、また点火装置の劣化、メインハーネスでさえももかなり劣化や錆、コネクター接触不良が進行している。
そして、メインヒューズやメインリレー、ポンプリレー等も劣化の可能性がある。
こういった高齢化したパーツのままでセッティングを始めるのは、それが純正ECUを書き換える、サブコンピューター、社外のユニットコンピューターのいずれを用いたとしても、同じように危険なこと。
各々コンディションが悪い状態であることを前提として、交換や修理などを考慮に入れたメニューですすめることが大切だ。
たとえば、今までは壊れなかったとされるメタリングオイルポンプも、劣化の報告があるという。
しかし、セーフ機能を持たない社外ユニットタイプでは故障や作動不良の検知ができない。
ロータリーエンジンは、エンジン内部に供給するべきオイル量が決まっている。
メタリングオイルポンプの不良により、本来供給するべきエンジンオイルが不足していた場合、そのままセッティングをするのは、エンジンに致命的なトラブルを招く可能性があると考えるべきだろう。
なお、ECUも基盤の劣化などが起こりうる。
その解決とポテンシャルアップを兼ねて、読み込み速度が速いROMに交換するというチューニングも行われている。