排ガス装置の役割

FD3SやFC3Sが搭載するロータリーエンジンのECU

メーカー純正の制御では、アクセル開度、回転数、負圧等で走行モードを決定している

通常時は14:1~20:1の範疇で

薄い空燃比を目指して制御

そして、それぞれの走行モードの各ゾーンで、排出ガス中に含まれる有害物質の量や質が変化している。

例えばパワーゾーンではトルクフルに走ることを目的とした制御とし、フィードバックゾーンにおいてはO2センサーの出力によって空燃比を制御しエンジンや環境にやさしい14.7:1を目指す等、多彩なモードを搭載している。

 

「燃費と排気ガスの浄化を稼ぐモード」や緩い坂道や加速時などの「13:1程度のやや濃いトルクを稼ぐモード」、急激な加速ではアクセルを踏み込んだ際の息継ぎを避けるための一瞬の非同期噴射から「排気ガスを出来るだけ出さないようにしつつ、徐々に空燃比を薄くするモード」など、モード間を行ったり来たりしながらエンジンはコンピューターによって制御されている。

そして、本稿の主題である排気ガス装置では排気ガスを積極的に制御、浄化し、触媒やマフラーが煤で汚れて目詰まりすることを防ぎ、排気抵抗を減らす役目を負っている。

このおかげでロータリーエンジンでは、ローターやシール部分の洗浄効果も期待でき、これにより燃焼室を長期にわたって洗浄するという作用もある。

その一翼を担うのが、触媒やエアポンプといった一連の排気ガス装置。

メーカー純正の制御ではこれら排気ガス装置も組み込んだ状態で、エンジンがより安定して燃焼する環境を提供している。

エアポンプ

エアポンプが機能することで得られるもの

O2センサーによるフィードバックで燃焼状態の適正化が行われることによる洗浄はもちろんのこと、重要になってくるのがエアポンプの仕事だ。

エアポンプは、機械的に加圧して二次エアをつくり出し排気ガスに与える事で、比較的燃焼温度の低い低回転でもカーボンの発生を抑え、エンジン内部をクリーンに保つ。

そして、排気ガスポートに酸素を与えて排気温度を上げ、排気ポート付近のカーボンを焼き切るポートエアという制御があり、同時に触媒の性能がどんな状況でも安定した酸化還元を行えるシステムとなっている。

また副産物として、圧縮低下の原因となる、排気ポート付近で起こる急激な温度低下による「ローターハウジングの線状摩耗にとって大敵である、カーボンの凝結」を作らないという作用もある。

つまり、「ロータリーエンジン車はカーボンを飛ばすために高回転をキープして走れ!」という考え方は、FC3S以降、FD3SやRX-8の制御においては通用しない。機械制御の昔と比べて、電子制御となったロータリーエンジンは、よしんば低い回転を多用したとしても、故障したのでもない限りプラグの電極のガイシは白いままなのだ。

エアポンプによって圧縮低下に歯止めをかける

つまるところ、ポートエアによる酸素供給により、二次燃焼をあえて招いて排気ポート付近の温度上昇を促すことで、ロータリーエンジンの圧縮低下に歯止めをかけるということになる。

また、エアポンプは作動制限があり上記のパワーゾーン判定中には作動しないが、アクセル開度や回転、負圧等の入力から判定されるフィードバックゾーンや軽負荷ゾーン等にマッチすれば、いかなる状態からでも洗浄が期待できる高次元なプログラムを持っている。

よって、エアポンプが付いてる車両はローターハウジングの摩耗傷の深さ、アペックスシールの摩耗量、エンジン内部のカーボンの堆積量ともに、低レベルをキープできるのだ。

そしてそのキーとなるのが、エアポンプで発生させた空気をエンジンの負荷や回転数に応じて触媒やポートエアへ走行モードによって供給するACV(エアコントロールバルブ)。

エアポンプレスの車両ではこの排気ガス装置の制御で防げるはずであったカーボンの堆積などが起こり、ローターハウジング内への攻撃性を高めるほか、黒煙を吐くなどの目に見える症状が発生する。